青春




南野秀一くんは高校生だ。
妖怪であったり妖狐であったり魔界に行ったり来たりしたり、不良の中学生と親友
だったり、人間よりもそれ以外の知り合いが山ほどいたり、と普通の高校生とは思え
ない生活をしているが、それでも彼は高校生である。
たとえ何千年も生きた妖狐であっても高校生は高校生。
高校生にしては落ち着きすぎて貫禄がありすぎる気がしないでもないが。

南野秀一くんは魔界統一トーナメントが終わったとたん、急に平和になった生活を満
喫している。
たまには学生らしいことをしてみたい。
昼休みに窓辺で読書して、女の子に勉強教えてと言われるシチュエーションもけっこう多い。
それを断らないから、クラスメイトの海藤に「女ったらし」と嫌味を言われるのだが。
別にオレはそういうつもりはない。
せっかく訪れた普通の高校生活を楽しみたいだけだ。

そんなことを思いながら、図書館に足を運ぶ。
放課後といっても、もう六時をすぎた。ほとんど人はいない。
司書の人も後片付けに取り掛かっていて、オレは苦笑しながらも借りていた本を返
し、新しい本を物色していた。
すると、いつものように女の子に声をかけられた。
「南野くん、ちょっと勉強教えてくれないかい?」
断る理由もないので、いいよ、と返事しようと振り返って、オレは軽く驚いた。
なんと、ぼたんがそこにいた。
ご丁寧に盟王高校の制服を着て!
素直に白状しよう。オレが思わず制服を着たぼたんもかわいいvと思ってしまったことを。
制服なんてほぼペアルックみたいなものだ。できれば二人で街を歩きたいなー、なん
てトリップしてみたが、それだとクールでかっこいい南野秀一くんのイメージが崩れ
るので表面上は冷静を装った。

「どうしたんです?その制服?」
「ん?買ったんだよ。皿屋敷中学の制服も持ってるけど、盟王高校の制服もあったほ
うが色々と便利だと思って」
「幽助は霊界探偵を辞めたんですよ。今さら必要なんですか?」

オレの素朴な疑問にぼたんはにっこり笑ってこたえてくれた。

「だって制服があったほうが簡単にあんた達に会いにいけるだろ?」

オレは自然に頬がゆるんでしまった。
たとえ『あんた達』と複数形であってもぼたんが会いに来てくれるのは嬉しい。

夕暮れ時とあって、窓から赤い光が射し込む。
本棚と本棚の間の狭いスペースにオレとぼたんは向き合っている。
オレはちょっとイタズラ心を起こしてみた。

「・・・!」

彼女を本棚に押し付けるような形で軽くせまってみた。
唇は奪わなかったけど、彼女の顔を間近で覗きこむぐらいのことはしてみた。
あと少しで彼女を抱きしめるような距離。

「な、なんだい?どうしたんだいいいい?」

動揺したぼたんの瞳はあっというまに大きく見開く。震えた声がおかしくてオレは笑 う。

「蔵馬っ?」
ぼたんは怒ったようにオレの胸を叩いて押しのけた。
オレは両手を挙げて降参した。

「からかわないでおくれよ!」
「ばれました?」
「蔵馬っ」

怒った顔も可愛い、なんて月並みなことを言うのもダサいな。
何を言ってもぼたんは照れるだろうけど。
そうするとオレの言葉はいつまでたっても冗談と受け止められてしまうし。

「普通の高校生をやってみたかったんですよ」
「は?」
「ほら、異性と思いがけない密着シーン、ドキドキの青春の一ページ、みたいな」

ぼたんは地の底までつきそうなため息を吐いてくれた。
そこまで呆れないで欲しいんですけど。

「青春ってあんたいったい年いくつなんだい?」
「花も恥らう十七歳です」
「よく言うよ、妖狐のクセに」

肩をすくめて、やれやれ、と首をふっているぼたんにオレは直球ぎみの変化球を投げ
てみた。

「純真な高校生の南野秀一くんは抱きしめたい女の子がいてもついつい遠慮してしま
うんです」
「はぁ?どういう意味だい?」

どうしてこれで意味がわかってくれないんですか。

「純情な少年は気になる女の子がいてもなかなか手が出せない、っていう心境です
よ。わかります?」

あいまいな表現、ではないはずだ。オレの心はこんなにも君が好きだよーって言って
いるのに。
首を傾げるところを見るとわかってないんだろう。
ま、いいか。どうせオレは妖狐だし。青春なんて今さらだから。

今度は遠慮しなかった。
ぼたんの肩を抱き、すばやくキス。
彼女を押し付けた本棚に並んでいたのは分厚い植物図鑑。たぶん一生忘れない本にな
るだろう。

どかっ。

ぼたんが思いっきりその図鑑を引き抜いてオレにぶつけてくれたから。
片手で図鑑を持てるって意外と握力があるんですね、ぼたん。

「あなたの新たな一面を発見して嬉しいです」
「蔵馬のバカッ!」

馬鹿だっていいじゃないですか。
だってオレは高校生。
大人じゃないから、こういう恋愛をしてもいいでしょ?

怒ってさっさと帰ってしまったぼたんの背中を見送った。
近づくともう一冊ぐらい何かが飛んできそうだったので、今日はこれくらいにしてお
いた。

彼女が投げつけてくれた植物図鑑を持って再びカウンターへ。
「あら、南野君。これは持ち出し禁止よ?」
背表紙の赤帯にでかでかと禁貸出と書いてあった。
恥ずかしかった。

しかたがないのでオレは手ぶらで図書館を出た。
茜色の空と真っ赤な夕日がどこまでも青春に似つかわしかった。

「明日会いに行きますか。また高校に来て欲しいし」

卒業までもう少し。
高校生の恋はまだ終わらない。








きらる様からいただきました!!
私がうちのサイトの5000hit記念に描いた盟王高校の制服を着ている蔵ぼイラストに
なんと、SSを付けて送って下さいました〜!!
もう嬉しすぎです〜!!(*>▽<*)!! 
私、メールを見て嬉しさで飛び上がってしまいましたよ!(笑)
しかも、ツボすぎます…!イタズラ心を起こしてぼたんにせまってる蔵馬とか!!
読みながらニヤニヤしっぱなしでした〜(^^;A)
最後の、植物図鑑を禁賃出だとは気付かずに持っていってしまい、司書の方に
ツッコまれたりとか…!(爆笑)
なんか、蔵馬さん可愛いですv ぼたん絡みでいつもとは違っちゃってる蔵馬とかって
かなり好きみたいですv(笑)
台詞も面白すぎで…!!蔵馬が普段言わなそうな(イヤ、実は言うのか??/笑)台詞が
随所に出てきて、かなりツボでしたvv
これらの台詞を蔵馬に言わせたきらるさまに拍手!!!バンザイ!!って感じです!!

きらるさま、あんなイラストにはもったいないほど素敵すぎる蔵ぼSSを下さって
本当にどうもありがとうございました〜!!(*>o<*)

誠に僭越ながら、背景に5000hitの際の例のイラストを加工したものを使わせていただきました(^^;

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